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[ESSAY:02] 点・線・面 – 世界を拡げる

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前回の「本を読むようにアートを読む」の続きです。前回を読まずにこれだけ読んでいただいても差し支えはありませんが、よかったら前回も読んでみてください。本を読むように、アート作品の背景にある点と自分の中にある点をつないで線をつくり、3つ以上の点から面をつくることで新しい世界が立ち上がる、というお話です。ギャラリーの名前とロゴに込めた思いも綴っています。

 

先日、建築家・隈研吾さんの著書「点・線・面」(岩波書店)を読みました。この本は、創造性がある人というのがいかに数多くの、そして分野を超えて点と点をつなぎ、線を結び、面をつくり上げているかということを見せてくれます。

 

この本のタイトルとしての「点・線・面」は、もちろん建築的な意味で使われています。20世紀モダニズム建築は、コンクリートを主役としたヴォリュームの建築がメインストリームだったけれど、21世紀の建築はそこから脱却し、もっと軽やかな点・線・面から構成され、しかもサステナブルで耐性もある建築を目指すべきだと著者は説きます。

 

前半は、著者がそのような思いに至った経緯を説明してくれます。20世紀のヴォリュームの建築史を概説しながら、それに関わる美術、哲学、物理学、生物学を縦横に結んでいきます。これがまさに「点・線・面」から構成されるこの建築家の脳内マップなのです。

 

そのうちの点の一つは、本書の中で著者が回想していますが、抽象絵画の創始者とも言われるカンディンスキーによるバウハウスでの講義録「点・線・面抽象芸術の基礎」で、著者が最初に「点・線・面」の概念に出会ったきっかけです。(これが高校生の頃だというから、もう次元が違うと思ってしまうのですが、それはさておき。)

 

私はこの建築家の思考の中を彷徨い、おそらく半分くらいは理解できていないのですが、自分なりの点をいくつか拾い出し、もう少し知りたいと思うことをメモし、何冊か新たに本を注文しました。本の後半では実際の作品(建築物)が紹介されています。そのうちの一つは私は実際に訪れたことがあり、印象に残っていたので、自分なりに拾い上げた点とつなげることもできました。

 

こういうことが、いつ何の役に立つのか分かりませんが、「面白い」とか「知りたい」と思ったことは、時間を空けてまた別の面白い何かとつながって、面の範囲を押し広げ、自分が認識できる世界を拡げていくものだ、という経験があります。隈研吾さんが、高校生で出会ったカンディンスキーの講義録を何十年も後に取り出してきたように。

 

ただし、「知りたいから、分からないから調べてみよう」という能動的な態度を、本を読むときにも、映画を観るときにも、旅をしてどこかを訪れたときにも、そしてもちろんアートに出会ったときにも常に持っていて、自分の中にそのかけらをストックしておかなければつながることはありません。

 

こうして本を読むようにアートを読む面白さは、アートの知識がなくてもできることです。というよりむしろアート以外の得意分野を持っている人の方がなおさら、自分の持っている知識や経験とアート作品の世界を接続しやすく、その人ならではの気づきを得ることになるのだと思います。経営者や専門職の人にアート愛好家が多いのは、そういう理由もあるのではないでしょうか。

 

ところで、この本を読んで私が本当に感銘を受けたのは、「ジャンプ力」です。というのは、「こんな建築があったらどうだろう」という着想のきっかけや思いつきは、かなり直感的・身体的なものであることにまず驚くのですが、それを実現するための具体的な方法、実現可能な方法は、建築家だから当然と言えば当然ですが、科学的に詰めていってちゃんと解答を見つけ出すのです。

 

初めの直感的な問いからの「ジャンプ力」。近年、こういう直感的・本質的な問いから物事を考えること=その名も「アート思考」が重視されています。次回のエッセイでそのことについて考えてみます。

この記事を書いた人

中島 紗知 |Gallery Pictor オーナー

画業を営む両親の元に生まれ、幼少期より美術に親しむ。監査法人グループ等にて企業のESGマネジメントコンサルティングに従事した後、2019年 Gallery Pictor 設立。 1999年神戸大学卒業、2015年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。東京大学主催・文化庁推進事業「社会を指向する芸術のためのアートマネジメント育成事業(AMSEA)」2017年度修了。

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