[ESSAY:15] ライブラリを作ってみたけど、なぜこうなったかについて
我々はどこから来たのか
我々は何者か
我々はどこへ行くのか
このセリフをどこかで聞いたことがありますよね? 19世紀の画家、ポール・ゴーギャンが死の前年に描き上げた大作のタイトルです(下図)。
しかしこのタイトルの文言はゴーギャン自身の言葉でありながら、その原形は彼がティーンエイジャーの頃にカトリックの神学校で刷り込まれた教理問答にあるようです。その教理問答は英語で次のようなものです。
“Where does humanity come from?”
“Where is it going to?”
“How does humanity proceed ?”
人間性はどこから来るのか?
それはどこへ向かうのか?
それはどのように進化するのか?
これは、100年前であろうと200年前であろうと、そのもっと昔でも、どの時代でもきっと問われてきたことだし(教理とはそういう普遍的なものでなくてはならない)、今私たちが生きている今日にも、問い続けるべきことなんだと思います。
私の中の半分の私は、「そんな答えの出ないことを考えているくらいなら、日々の仕事をうまくやることを考えろよ」と言っているのですが、もう半分の私は「目先のことばかり考えていてはいけない。視野を広げて世界をみよう」と言っています。どちらの私も間違ってはおらず、日々の仕事をうまくやることと、本質的な問いを持ち続けることは、必ずしも相反しないと思っています。
絶えず動いている世界のなかで、現在地と行き先とそこへ行く方法を常に確認し、「間違っているかも」と思ったら微調整し、時には大きな方向転換をして、私たちは生きていくものだからです。それが明日の仕事のことでも、人類の未来であっても。
ライブラリの本を集めているときに、先ほどの3つの教理問答が(あるいはゴーギャンの作品に付けられた問いが)私の頭の中にあったわけではありません。しかし集めた本を並べて置いてみると、この問いを探るためのリストになっていることに気がつきました。
そして、本を並べてからもう一つ気がついたこと。アートと哲学とサイエンスは、有史以来おそらく最も切実にこの問いを考え続けてきた分野として、時に反目し合い、時に協力し合いながら発展してきたのだということです。
そんなわけで、次回以降はそれぞれの本をご紹介しながら、答えの出ない問いに向かい合おうと思います。
◆ライブラリ書籍(期間中に追加・変更することがあります)
アート思考
- 点・線・面(隈研吾 / 岩波書店)
- 世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること(ニール・ヒンディ/ クロスメディア・パブリッシング)
- アートサイエンスが導く世界の変容(塚田有那 / ビー・エヌ・エヌ新社)
- スペキュラティヴ・デザイン(A・ダン&F・レイビー / ビー・エヌ・エヌ新社)
知覚・認識
- 世界はありのままに見ることができない(ドナルド・ホフマン / 青土社)
- なぜ世界は存在しないのか(マルクス・ガブリエル / 講談社)
- 「私」は脳ではない(マルクス・ガブリエル / 講談社)
生命・進化
- 生命とは何か WHAT IS LIFE ?(ポール・ナース / ダイヤモンド社)
- ビジネスと人生の見え方が一変する生命科学的思考(高橋祥子 / ニューズピックス・パブリッシング)
- 動的平衡2 (福岡伸一 / 木楽舎)
多様性・格差・分断
- ブループリント「よい未来」を築くための進化論と人類史(ニコラス・クリスタキス / ニューズピックス・パブリッシング)
- 世界の多様性(エマニュエル・トッド / 藤原書店)
- 銃・病原菌・鉄(ジャレド・ダイアモンド / 草思社)
ポスト資本主義
- 未来への大分岐(M.ガブリエル, M.ハート, P.メイソン, 斎藤幸平編 / 集英社)
- グローバリズムが世界を滅ぼす(E.トッド, H.チャン他 / 文藝春秋)
アーティスト作品集
- 幸田大地 写真集 (back)ground
- 野口恵太 写真集 PLANKTON, FLOWER
- 星野美津子 個展カタログ Spuren
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